SPIなんてこんなもの
適性・適職診断のエントリを書いているときに、「心理テスト」をこきおろした本を確かどっかで立ち読みしたんだけど、何だったっけかな、と思っていたのだが、今日たまたま本屋で見つけました。
- 作者: 村上宣寛
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2005/03/30
- メディア: 単行本
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ひと癖あるイヤミさが気にはなるものの*1、心理テストや適性検査で「自分探し」をしちゃう人にはとりあえず対症療法的な解毒剤の役は果たすかと思う。
一部抜粋。
「リクルートのSPIの半分は学力検査問題で、高得点の人は、当然、中学校、高校の成績が良いだろうが、会社に入って何ができるかはわからないな。SPIの高得点者が会社に入るとスゴイ仕事ができるということがあればいいんだが、ほとんど証拠はないな」
「ええっ。そうなんですか」
「そうなんだよな。専門的には妥当性研究をしないといけない。さすが、リクルートは研究はしているようだが、はっきりした証拠はないな。ものすごーく低い関連性くらいならあると思うが。そんなもの、宣伝には使えないよな。……。」
…(略)…。
「これはA8という適性検査のパンフなんだが、中身はよくわからないな。プロフェッショナル度、柔軟性、行動再現性、市場価値、投資価値、アカウンタビリティ、安定性、論理性が測れるというのがウリなんだ。……。しかし、心理検査なら、信頼性と妥当性の根拠を必ずマニュアルなり、解説書に書くんだが、人材会社の適性検査なんかは、商売目的だから、根拠は何一つ書いてないんだよ。つまり、プロフェッショナル度で高得点の人が即戦力を発揮できる人という証拠があれば、オレだって素晴らしいと思ってあげるんだがね。残念ながら、コンピテンシー高得点の人が入社してから、バリバリ仕事ができるという証拠もないな」
「じゃあ、なんで、そんな適性検査を入社試験に使っているんですか」
「さあ、聞いてみないとわからんが、たぶん会社がお金持ちなんだろう。一人4000円だから、ものすごいお金だね。オレの5因子性格検査なんか500円なんだけどね。それと、やっぱり人事部が馬鹿だからだと思うな。根拠もない適性検査を他の会社がやっているから、自分の会社でもやろうというのはどう考えてもおかしい。やっぱり自分の会社にどんな人材が必要かは、自分で研究しないといけない」
「でも、研究は難しいんじゃないですか」
「いや、簡単だよ。SPIやA8の予測が本当に正しいかは、追跡調査をすれば簡単にわかるよ。面接、SPI、A8などの点数を2、3年保存して、勤務成績なり営業成績と突き合わせればいいだけの話だ。この程度のことがわからないなら人事部は馬鹿だろう。知っていてやらないのなら人事部は怠慢だろう。どっちみち、そんな人事部なら要らないな。また、逆に、会社内部で成績優秀者を選抜して、普通以下の成績の人と比較する方法もあるな。つまり、両方のグループに、SPIやA8を実施して、どの検査問題で差が出るかを調べればいいんだ。差の出た検査問題を集めて適性検査を作ると、妥当性の高い適性検査ができるんだ。しかし、SPIやA8はそんな作り方はしていないだろうな。だから予測力は期待できないよ」(p.223-5)
適性検査なんて(今のところ)こんなもの、というお話。
書いている内容はともかくとして、書きかた(形式)の面では、おいおい『嫌韓流』かよ(w、てな感じも。
ロールシャッハ・テストや矢田部ギルフォード性格検査をとりあげた章では、検査そのものへの批判を超えて、何人かの学者が実名をあげてほとんど「罵倒」されてますし。
奥付をみると、今年4月4日に一刷発行、6月14日で五刷になってますから、罵倒芸というのは、やはり売れるんですな。