しつけの問題

3年生のゼミで「しつけは衰退したか」をテーマにしている班があるので、たまたま目を通した本のなかからメモ。
確かに私自身も、幼稚園や小学校がらみで、しつけの悪い子どもが増えたという話をよく見聞きするのですけども。

いろいろな事柄の中で外国人の筆者達が一人残らず一致する事がある。それは日本が子供達の天国だということである。この国の子供達は親切に取扱われるばかりでなく、他のいずれの国の子供達よりも多くの自由を持ち、その自由を濫用することはより少なく、気持のよい経験の、より多くの変化を持っている。赤坊時代にはしょっ中、お母さんなり他の人人なりの背に乗っている。刑罰もなく、咎めることもなく、叱られることもなく、五月蠅く愚図愚図いわれることもない。日本の子供が受ける恩恵と特典とから考えると、彼等は如何にも甘やかされて増長して了いそうであるが、而も世界中で両親を敬愛し老年者を尊敬すること日本の子供に如くものはない。爾の父と母を尊敬せよ……これは日本人に深く浸み込んだ特性である。

(E.S.モース『日本その日その日1』東洋文庫、p.37-8)

1877(明治10)年当時の話である。
しつけなくても、「しつけのいい子」は育っていたわけだ。
社会の変化といってしまえばそれまでだが、「しつけの悪さ」は(狭い意味での)「しつけ」の問題ではないということだ。
じゃあ、何の問題なのか。
ゼミ生諸君、考えてくれたまい。

日本その日その日 (1) (東洋文庫 (171))

日本その日その日 (1) (東洋文庫 (171))