佐賀大学附属図書館の見識を疑う


どうもここのところ体調の振幅が激しい。
昨日も大学にいるうちはそこそこだったのが、帰宅して夕食を終えたら、急に気分が悪くなり、熱も少しあったので、一件ミーティングキャンセルの連絡をしてから、早々に床についた。
10時間寝たらかなりすっきりして、熱もなかったので、1)歯医者に行き、2)クリーニングを出しに行き、3)髪を切りに行き、今週の極私的懸案事項3件をまとめて片づける。
復調するのがわかっていたら、今日のミーティングをドタキャンせずにすんだのだが、申し訳ないです(>山○くん&○山さん)。


まあ、疲れとストレスが澱のように溜まってきているということなのだろうが、そういうときはどうも虫の居所が悪いのが人間の常のようで、虫の居所が良ければスルーしていただろう話を少し。
ネット上でも各所でとりあげられていたが、佐賀大学附属図書館が「高校生が選ぶ『大学に入ったら 読みたい本100選』」という企画をおこなったそうだ。
別に、この企画自体をどうこう言うつもりはないし、今の高校生が読みたい本がどういうもんかという単純な好奇心は私にもある。
ま、そのうちのベスト10は十分に予想のつくものではあるが(以下のカッコ内は得票数)。

  1. (483) ハリー・ポッター/J.K.ローリング
  2. (351) 世界の中心で、愛をさけぶ片山恭一
  3. (187) バカの壁養老孟司
  4. (126) Deep Love/Yoshi
  5. (114) “It”(それ)と呼ばれた子/デイブ・ペルザー
  6. (109) Good Luck/アレックス・ロビラ/フェルナンド・トリアス・デ・ベス
  7. (104) 蹴りたい背中綿矢りさ
  8. (79) 蛇にピアス金原ひとみ
  9. (76) ダレン・シャンダレン・シャン
  10. (64) 解夏さだまさし


♪〜でも、「バ○の壁」って言うアンタこそがバ○の壁ですからっ、残念っ〜♪
てな愚痴もまあ置いとこう。
あのですね。
「なお、佐賀大学附属図書館では上位100冊を蔵書として備えます」ってのは、どういう見識によるのだ?
大学図書館というのは、学生が読むべき本を揃えるところだろう。
学生が読むべき本と、学生が読みたい本には、むろん重複するところもあるだろう。
考え方によっては、学生が読みたい本こそが学生が読むべき本であるという理路もありえよう。
だったら、その理路=選書・蔵書に関する図書館のフィロソフィーをちゃんと示せっ!
みんながこの100冊を欲しいって言うから、買ってあげようと思いました、ってな知性のかけらも感じられないようなもの言いをするな。
ガキの使いやあらへんで!


公共図書館というのは、そもそも利用者のこづかいを節約することに存在意義をもつものなのか、ということを確かひつじ書房松本功さんが『税金を使う図書館から税金を作る図書館へ』で書いていたと思うのだが...
...書いてないや。
ホームページの日記に書いてたんだっけな...
...あったあった(探すこと15分でまたストレスが)。
http://www.hituzi.co.jp/hituzi/199908ns.html#part1


大学に入ったら読みたい本てのは、大学に入ったら買ってでも読むって。
ブックオフで安売り叩き売りされてる本も多いしさ。
この100冊を買う予算で他に買うべき本は本当にないのか?
ブックオフにも相手にされず、ましてベストセラーにもならず、早々に品切れ・絶版で消えていく「良書」を、せめて大学図書館くらいは「保護」すべきでないのか?
市場淘汰によって絶滅していく種はそれでしかたないのだ、市場淘汰を生き延びていく種こそが「良書」なのだ、という市場淘汰による「文化」の進化論という考え方もありえよう。
だったら、その進化論の一端だけでも開陳しろよ。
ベストセラーの品揃えを誇るのは営利目的の書籍量販店でよい。
大学図書館が疑いもなく(と見える)、それと同じことをやっていていいのか?