『若者と仕事』

本田由紀さんは、こういう本をお書きになっている先生です。
学生諸君は講演会までに読んでおくように。

若者と仕事―「学校経由の就職」を超えて

若者と仕事―「学校経由の就職」を超えて

ついでに今年5月に私が書いた書評(共同通信配信)をアップしときます。

 例年、この時期は学生が就職活動に追われ、実質的にゼミが成り立たない。企業による教育妨害と言ってもいいだろう。このことひとつをとっても、いかに企業(と社会)が、大学教育など仕事に役立ちはしないと思っているかがよくわかる。
 本書は、建前論に隠されがちな、こうした世間の常識――学校教育と仕事との乖離――を、さまざまな調査データによって丹念に裏づけていく。そこから浮かびあがってくるのは、日本に特異な「学校経由の就職」というシステムが、現在ではうまく機能しなくなっていることだ。
 かつては高校を卒業すると、学校の紹介してくれた企業に就職するというルートが一般的だった。学校は、特定の企業との信頼関係に基づきつつ、継続的に労働力を供給していく。送りこむ学生の選択基準は、学校での成績や出席状況、勉学態度であって、仕事に求められる能力や適性を身につけているかではない。学生にとって、学校はあくまで就職への経由点にすぎず、職業能力形成の場ではなかったのである。
 このような「学校経由の就職」が一般化したのは高度経済成長期であり、当時の労働需要の大きさなどの要因が、教育と仕事の乖離という問題を覆い隠すように作用したと著者は指摘する。だが、産業構造や経済状況の変化にともない、隠されてきた本来の問題が、今やさまざまな歪みを生じつつあるという。
 たとえば、フリーターやニートなどの無業者・非正規労働者の増加。これについては若者側の就労意識の変化が問題にされることも多いが、著者はむしろ、企業・産業側の労働需要のあり方が変化したこと、また、学校がその変化に対応しきれておらず、仕事への移行に困難が生じていることを問題視する。
 こうした現状を改善するため、本書は「教育の職業的意義」の向上を説き、最終章では具体的な政策提言もなされている。「職業的」以外の教育の「意義」に関する議論の薄さが少し気にはなるが、優れた問題提起の書であるのはまちがいない。

辻大介・関西大助教授)

ちなみに本田さんのブログ(id:yukihonda:20051024)によると、

ところで私は書評を書くときに、末尾の部分にもっとも力を入れるようにしている。末尾がよれよれだと、評者の思考の明晰さも、評された本の論理構造の明晰さも、いずれも疑われてしまうからだ。


拙評の末尾部分はというと...


見事によれよれ...


まことにもって、あいすいません(泣)