ケータイと不倫

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――不倫や離婚に関する相談が最近はものすごく増えているそうですね。
日本の社会で不倫がものすごく増えているからですよ。その大きな要因は携帯電話だと思います。以前だったら、異性に対して連絡を取ろうとしたら、手紙を書いたり自宅に電話したりしなければならなかったでしょう。これって、ものすごくハードルが高いでしょう。しかし、携帯電話の普及で簡単に連絡が取れるようになりました。しかも、携帯メールの普及がそれに拍車をかけています。
電話に相手が出なくても一方的にメールを送りつけておけば、声を出さなくてもいいですしね。昔に比べればはるかに簡単に異性と連絡がとれるようになったと思いませんか。実際、私たちのところに来る相談件数も携帯電話の普及に比例して増えてきました。不倫している人たちは例外なく携帯メールの達人ですよ。

(山崎世美子(談)「携帯が不倫を増やした」『日経ビジネス』2005年2月21日号,p.81)

いや、ホント、そうだと思う。
渡辺淳一ダイセンセイも次のように書いていらっしゃる。

恋する者にとって、携帯電話ほど便利なものはない。それも電話よりメールのほうが、相手の状態を気にせず送れるだけ便利である。
もっとも、菊治の年令*1では携帯を持っていない人もいるし、持っていても、メールをつかえない人もいる。
多分、そういう男は恋人がいないからで、恋する人がいたら必ずメールもできるようになる。
そしていま、菊治は携帯なしでは一日も過ごせない。このメールが、冬香とつながる唯一の、そしてたしかな命綱である。
むろん、携帯で話すこともあるが、それは午前の、子供たちがいないときにかぎられる。それも冬香が家にいるときに、「これから、電話をしてもいい?」とたしかめ、「はい、お待ちしています」という返事をもらってから始める。
初めは時候見舞いのようなことから始まっても、じき、「早く逢いたい」「大好き」といった、他愛ない言葉のくり返しになり、冬香からも、「わたしもです」「お逢いしたいです」と返ってくる。

(「愛の流刑地」『日経新聞』2005/2/25朝刊)

ダイセンセイの妄想力の貧困さにげんなりするのはさておき*2
データの裏づけがあるわけではないが(どっかの雑誌とか調査していそうだが)、ケータイが何を変えたといって、「不倫」にまさるものはあるまい。
「ケータイ・コミュニケーションは何を変えるか」というお題で原稿を頼まれているのだが、「不倫を増やす」を結論にしたい、せめてネタに使いたくてしょうがない。
ことばの起源―猿の毛づくろい、人のゴシップ 伏線にRobin Dunbarの『ことばの起源』を使ってだな、集団で生活を営む動物としてのヒトというサルは、集団生活における関係の葛藤・緊張を解消するために、ひとつは発情期に限定されない性交渉、もうひとつは毛づくろい→音声言語(による毛づくろい)、という手法を進化させた、それらの手法がケータイメールというITツールによって、今また1つに交わろうとしている、とか何とか。
妄想全開のトンデモ仮説ではあるのだが*3、ああ、書いてみたい、竹内久美子が書く前に。

*1: 50代という設定

*2: 日経読者のおっさんたちはこれを読んで萌え〜ているんだろーか。妄想力という点ではエロゲなんかのほうがはるかに上だと思うのは私だけでしょうかそうですか

*3: ちなみにDunbar自身の仮説もけっこう論理展開に飛躍がある(おもしろい仮説ではあるのだが)。中村美知夫「霊長類の毛づくろいと言語の起源」『大航海』52号、pp.100-108、2004年