内閣府「治安に関する世論調査」


19日(日)の各紙で、調査結果の概要が報道されていた。*1
内閣府の概要報告書は、ここに。
調査自体についてもいろいろ思うところはあるが、報道のしかたにやはり少し疑問がわく。
たとえば、朝日の1面でとりあげられた記事の見出しは

「日本の治安悪化」
9割近くが実感


ここ10年で日本の治安は「悪くなったと思う」者が86.6%(「どちらかといえば悪くなったと思う」42.8%+「悪くなったと思う」43.8%)、というのが、その見出しのもとになった調査結果だ。
だから、「9割近くが」というのはよい。
しかし、「実感」というのは適当なのか?
「実感」というのは、治安悪化が事実であり、その事実を事実としてちゃんと感じている、という含みをもつ。
“治安悪化”が事実であるかどうかは、9/16のエントリでも紹介したとおり、いくつか異論がでてきている。
「実感」ということばを使わない見出しもありえただろうに。


ちなみに、日本の治安に「関心がある+ある程度」と答えた者(全体の80.9%)を100%として、関心をもったきっかけ(複数回答)をみてみると、

  1. テレビや新聞でよく取り上げられるから (83.9%)
  2. 家族や友人との会話などで話題になったから (30.0%)
  3. 身近で犯罪が発生した(発生しそうになった)から (23.0%)
  4. 外国旅行などで外国の治安状況を見聞したから (15.0%)
  5. 防犯ベルなどの防犯商品やその宣伝広告をよく見かけるから(13.8%)
  6. 警察や自治体が積極的に広報しているから (11.7%)
  7. 自分の親や子どもなどが一人暮らしをするようになったから (10.8%)
  8. 住民によるパトロールなどが行われるようになったから (8.4%)


治安に関心をもったきっかけは、圧倒的に「メディア」なのだ。
一方、実際に「身近で犯罪が発生した」からというのは、「しそうになった」というのを含めて、2割強しかいない。
関心をもったきっかけでなく、治安悪化と感じるようになったきっかけとしても、おそらく同様だろう。
メディアによってそう感じるようになったことを、「体感治安の悪化」に含めていいものなんでしょうかね(朝日は「『体感治安』が悪化したことが、浮き彫りになった」としてますが)。


この調査からは、実際に治安が悪化したかどうかは裏づけられない。
だからといって、意味のないゴミ調査だとは私は思わない。
「治安悪化」感がはたして実態にどこまで応じたものなのか、「治安悪化」感が何によってどのように生じているのか、をある程度まで分析することはできると思う(設問項目をみると)。
だから、内閣府にはその分析をやってほしい、メディアはその分析結果こそを報じてほしい。
ていうか、データをおれにくれ、手弁当で分析するからさ。
ついでに、調査票そのものも作らせてくれ、今度やるときには。

*1: 同種の調査は今年3月20-21日に読売新聞もおこなっている(読売新聞4月8日)