『正論』7月号

に掲載されたシンポジウム報告のタイトルは「脳科学が証明した家庭教育と父性・母性の重要性」。
んなもん、脳科学に「実証」できませんってば(笑)。
パネリストは、『ゲーム脳』のモリモリさんといっしょくたにされて心外らしい川島隆太・東北大教授と、マークス寿子、山谷えり子冨田和巳、という面々。
次は、川島氏の発言より。

僕の父親はたいへん厳格で、父親が家にいる休日が大嫌いでした。……。一方、母は、父が行き過ぎた時に僕が逃げる場所になってくれていました。このように、父親は躾、とくに叱るという躾をする、母親はかばう、保護するという役割分担をしていました。
この役割分担は、脳科学的に考えても非常にリーズナブルなんです。褒めることで躾ができるかというと、絶対にできません。動物実験をすると明らかですが、怒るということ、叱るということで躾るとネズミでも一度で覚えます。しかし、餌をあげるといったような心地よい情動で何かを覚えさせようとしても難しい。……。
また心地よい情動のなかで心が育まれるというのも事実です。躾とは違う系統の脳で育まれていきますから、どちらかに偏っていたのでは脳はバランスよく育たないと考えます。
ですから、家庭の中では躾役と褒め役を分業することが大切だと思います。なぜ分業が必要か。どうしても叱るばかり、もしくは褒める方だけに行ってしまったりということで、一人の人間が平等に二役をこなすということはなかなか難しいのです。従って、父母の役割というよりも家族の役割として、叱る係、子供を褒め、抱きしめて優しくする係に分かれるのがいいだろうと思っています。
父と母の役割という問題に、あえて私は踏み込みません。本当は母が抱きしめ、父が叱るのが正しい姿だと思っていますけれども、そういう正論だけを吐いていまの世の中がついてくるかというと、そうではありません。母親だけ、父親だけの家庭はどうするのかと弱点をついてきて、話を全部ひっくり返す、あるいは否定しようとする世の中ですので、家族で役割分担をするということを主張したいと思います。

(p.255-6)


脳科学が証明する「父性・母性の重要性」なんて、こんなもの。


本音の話をしましょう。男性が子育てできるか。子育ての手伝いはしてほしい。でも本当に父親が子供に愛情を持って接して育てることができるか。これは多分できないですよ。こういうと男は生物学に逃げていくと批判されますが、やはり人間以外の種族ではオスは種をまいたら、あとはどこかに遊びに行っちゃうんですね(笑い)。……。その種を育てるのはメスで、メスが家庭を作って、子供を育てて社会に出す。人間以外のほとんどの動物はそうして子供を作ってきているわけです。人間のオスにも、その本能があるのではないかなとオスとして感じているところはあります。
しかし、我々は家庭を築くという文明をつくりました。先程説明した前頭前野が本能に抑制をかけ、抑え込みながら家庭を作っているわけですね。では父親が本当に親になれるのかというと、僕は母親次第かなと強く思います。僕は医者で出産のシーンを何度も見ていますけども、自分の子供が生まれたところに立ち会って、「子供を抱け」といわれた時は震えて抱けませんでした。いくら知識があっても、オスというのは基本的に子供に対して一歩引いてしまうところがあるのかもしれない。
その前提に立って家庭づくりを考えていけば、女性が中心にならないと、旦那も子供もついてこないかということに気がつけば、世の中が幸せになるのかなという思いはあります。自分は好き勝手しているつもりが実は女房の手のひらの上で踊っていたというのが、ある意味男としては一番幸せなんじゃないかな。こんな妄想を抱いております。

(p.258)


以上、脳科学者が結論したのは「妄想」でした。
だいたい、「前頭前野が本能に抑制をかけ」て、幸せな家庭が生まれるんなら、「父親が子供に愛情を持って接して育てることができ」ないっつうあんたは、前頭前野がちゃんとはたらいてないっつうことではないの?
それって、あんたが「ゲーム脳」ってことじゃん。