大学時代しなければならない50のこと

学生のブログを(盗み)読みしていると、実におもろい、たのしい。
なかには読まれていることに気づいていない(らしい)学生さんもいるが、けっこう探りあてたりしているのだよ。


それはともかく、先日、3人の3回生が「就活がせまってくるんですけど、何をしたらいいんでしょうか」と研究室にやってきた。
自分ではたいした話をしたおぼえもないのだが、3人が3人とも、その話をブログに書いていて、「へえ」と思った。
いや、「これくらいのことでも、案外、意識できていないもんなんだなー」と思ったのである。


就職の希望先は?と訊くと、マスコミ関係だという*1
それなら話は簡単。
「100人に1人しかあてはまりそうにない自分のセールスポイント(PRポイント)を見つけたまえ。なかったら、あと半年で作りたまえ」


ここで、一挙に場の雰囲気は「......orz」状態になる。


言うまでもなくマスコミ業界は難関である。
大手のマスコミ企業の倍率は100倍なんてめずらしくもない。
その難関を突破していくには、100人に1人のセールスポイントがないと話にならない。
マーケティングでいう競合との差別化である。
ことほどさように話は簡単なのである。


「100人に1人のセールスポイントなんて、自分にはありそうにないなあ」と思ってもあきらめる必要はない。
100人に1人のセールスポイントをもっているように、自己PRできればいいのである。
自己言及的になるが、その自己PR能力こそが、100人に1人しかない能力なのだから。
そして、そのPR能力=コミュニケーション能力こそが、マスコミ産業の求めるものにほかならないのだから。


自分でいうのも何だが、私は学生時代、そのようにして、大手広告代理店2社と準キー局1社の内定をもらった(他にも最終面接クラスまで行っていたのが数社あったが、他の内定をもらった時点で辞退した)。
たとえば、これ(↓)くらいのことでいいのである。


私は学生時代ビンボーだったので、とにかくバイトの数をこなしていた。
しかも、飽き性なので長期のバイトはほとんどしなかった。
どうせ金を稼ぐなら、いろんな職種や商売を経験したかったせいもある。
おそらく、4回生までに100近くは短期バイトをこなしたんではないかと思う。
これを“多種多様な職業経験豊富”というようなセールスポイントにして、今でいうエントリーシートに書いた。
いろんな職業世界を知っていますよ、と。
ここで、ひとつのポイントは、できるだけ具体的に書くことである。
私は実際にこなしたバイトの数を書いて、注釈をつけ、細かい字でびっしりその職種を書き連ねた(面接官に興味をもってもらえそうな順に*2)。


この1つだと、まだきつそうだと思ったので、同じようなやりかたでもう2つ、計3つのセールスポイントを作って書いた。
セールスポイントは必ずしも数が多ければ多いほどいいというものでもない。
特色のないこと(海外旅行をけっこうしました、とか、クラブ・サークル活動を熱心にやりました、とか、2人に1人はあてはまりそうなこと)は、書かなくてよい*3
3つくらいに絞って(1つ1つにできるだけ具体性をもたせて)、重要度の高い順を考える。
その順にエントリーシートに書き、面接で訊かれたときには、その順に話す。
時間切れで話しきれなかったとしても、最も重要なセールスポイント第1位は、相手に伝えられる。
残りは面接の時間に余裕があれば言うくらいのつもりでいれば、焦らずにすむ。


もっといろいろ戦略は考えたけども、これくらい自分なりにきっちり戦略を立てておけば、かなりアドリブ力を要する面接の質問もけっこう答えられるものだ。
しかも、面接官はこういう戦略を立てる力(またはちゃんと戦略を立ててきたヤツかどうか)を、さすがに見抜いてくれるものだ。
逆にいえば、それが見抜けない面接官はだめな面接官であって、そういう面接官の多い会社はダメな会社なので執着する必要はない。
私が最終的に入社した広告代理店の場合、1次の面接官がそそくさと5分程度で質問をおえた後で、「これくらい志望書がきっちり書けていれば、たぶん最終面接まではいくと思うよ、でもキミは正直すぎるようなところがあるから、これからの面接ではうまく立ち回ることも考えてね」とアドバイスまでしてくれた。


今から半年で100人に1人のセールスポイントを作ることは確かに難しい(不可能ではないと思うけども)。
だったら、こういう戦略をあと半年かけて考えるべし。
まだ就活までには2〜3年あって、マスコミ業界を志望する人は、100人に1人のセールスポイントを作るべし。
何でもいいのだ。
映画好きなら映画好きをセールスポイントにすればいい。
だけど、年間100本、大学時代に400本見ました、くらいではセールスポイントにはならない。
その程度の映画好きは世の中にごろごろいる。


私の入社した広告代理店には、中谷彰広というCMプランナーがいた。
今はとっくに辞めてしまってライターをやっている(かの有名な「面達」の著者だ)。
個人的には好きなタイプではないが、この人は学生時代に月100本、計4800本の映画を見たという。
レンタルビデオのない時代に、だよ。
これくらいやれば、単なる映画好きという以上の付加価値が、ものすごく出てくるわけですよ。
月に100本どうやったら映画館で映画を見ることができるのか(しかも中谷氏は大学の授業をさぼっていたわけではない)、まずそこからして「すごい」と思うじゃないですか。
大学時代にやらなきゃいけないのは、こういうことなのですよ。


大学時代しなければならない50のこと (PHP文庫)

大学時代しなければならない50のこと (PHP文庫)


個人的に中谷氏の本は好きなわけではないが(「面達」も含め)、この本は薦めておきたい。
特に大学に入りたての人、これから入ろうとする人は、一度読んでみてほしい。
いや、3回生だろうが、4回生だろうが、決して遅くはない。
必ずしも就活対策のためではなく。
大学とは本来おそらく、こうした時間の使いかたのできる場を学生に与えるためにあるものなのだ。
学生諸君の検討を祈る(いや、就活だけでなくて、人生の)。

*1: 一応マスコミ専攻のゼミなので、それもまた当然ではあるのだが、私のゼミは外れ者も例年けっこう多いので、マスコミ専攻なのにマスコミをまったく志望しないという人もめずらしくないのである

*2: 動物解剖助手とかね

*3: マスコミの就活の場合はですよ