幼児期にテレビを見過ぎるといじめっ子になりやすい=米調査

http://www.reuters.co.jp/newsArticle.jhtml;jsessionid=AMFR4ODN54WBWCRBAEKSFFA?type=worldNews&storyID=8084185

4歳時にテレビを見過ぎた幼児は学齢期に達した段階でいじめっ子になりやすいという調査結果が4日、米国で発表された。

 一方、親が子どもに本を読み聞かせたり、外で遊ばせたりして普通に接した場合、いじめっ子になりにくいとしている。

 ワシントン大学の研究グループは、母親がいじめを観察した1266人の4歳児が6―11歳になったときのデータを調査。テレビの視聴時間や外遊び、読書、親子の対話などを調べた結果、約13%がいじめっ子と判断された。


講義のネタ探しで見つけたのだが、「普通に接した場合」ってところにちょっと引っかかったので、原文探してみた。


http://www.reuters.com/newsArticle.jhtml?type=topNews&storyID=8081886

At the same time, children whose parents read to them, take them on outings and just generally pay attention to them are less likely to become bullies, said the report from the University of Washington

"generally pay attention to them"かあ。なんか日本語で「普通」と言われると、それこそイジメに至る圧力を感じてしまうもんで。
しかし、この「約13%がいじめっ子と判断された」ってのも(原文でも"about 13 percent the children turned out to be bullies")、誤解をまねきそうな表現である。
もともとの研究報告書の本文を読んでいないんで、はっきりしたことは言えないが、↓にあるアブストラクトを見ると、ロジスティック回帰分析にかけているようなので、けっこう恣意的な区分ではないかと。


http://archpedi.ama-assn.org/cgi/content/short/159/4/384


イジメ行動スコアみたいなものを作って、「これ以上のスコアはまあイジメっ子と言っていいでしょう、これより上のスコアでも下のスコアでもいいけど、分析の便宜上ね」といったくらいでないか。
つまり、ロジスティック回帰分析の従属変数(これは2値をとるので、イジメっ子/非イジメっ子となる)に放り込むための、いわば分析の「前提」であって、結果として得られた知見ではないではないかと疑われるのだ。
しかも、テレビを見過ぎた子の「約13%」がイジメっ子になるわけじゃないし(おそらくは)。
研究報告書アブストラクトのロジスティック回帰分析結果のオッズ比=1.06を見ても、テレビ視聴の効果はそんなに高くないんじゃないかなあと思える。1ポイントの単位が何かが問題だが、仮に1時間だとすれば、1日1時間テレビを見る子と5時間テレビを見る子を比べた場合、後者は前者より1.06の4乗=約1.26倍ほどイジメっ子になりやすいというくらいの効果ですね。
まあ、疫学的にはけっこうな数値ではあるだろうが、他の独立変数にどのようなものが含まれているかによっても分析結果は変わるし、テレビを見過ぎることの背景的な潜在要因(擬似相関要因)がどこまで排除されているか=純粋にテレビを見ることの効果がどこまで取り出されているかが問題ですわな。
報告書の本文あたってみるかとも思うのだが、しかし、これを読むためだけに30ドルかけてsubscribeするのはちょっとためらわれるのであった。


ちなみに、テレビの学力への影響については、こんなのも。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=11700636
via: http://pamplemousse.blog5.fc2.com/blog-entry-18.html