別冊SIGHT『日本一怖い!ブック・オブ・ザ・イヤー2005』


ビジネス&サイエンス部門の選書は次のとおり。


編集部の3冊

堀江貴文のカンタン!儲かる会社のつくり方

堀江貴文のカンタン!儲かる会社のつくり方

ニート―フリーターでもなく失業者でもなく

ニート―フリーターでもなく失業者でもなく

虚妄の成果主義

虚妄の成果主義


稲葉振一郎の5冊

経済学思考の技術 ― 論理・経済理論・データを使って考える

経済学思考の技術 ― 論理・経済理論・データを使って考える

反社会学講座

反社会学講座

安全神話崩壊のパラドックス―治安の法社会学

安全神話崩壊のパラドックス―治安の法社会学

広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス

広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス

人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (上) (NHKブックス)

人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (上) (NHKブックス)


山形浩生の5冊

Free Culture

Free Culture

ディジタル著作権

ディジタル著作権

環境リスク学―不安の海の羅針盤

環境リスク学―不安の海の羅針盤

こうすれば犯罪は防げる 環境犯罪学入門 (新潮選書)

こうすれば犯罪は防げる 環境犯罪学入門 (新潮選書)

グローバル・テロリズムとイスラーム

グローバル・テロリズムとイスラーム


ホントに怖えー。
さるところから頼まれて書いた「今年の3冊」が上の「5冊」とあやうく完全にかぶりかけた。
「『反社会学講座』はまあ入れるとして、その流れで『安全神話崩壊』も入れようっと、ん〜、あと1冊『人間の本性』入れたいな〜、でも社会(科)学関連って指定だしな〜、これは別の分野で挙がるだろうしな〜、別のにしとこ。」
というわけで、かぶったのは2冊にとどまった(ふー)


稲葉さんの『反社会学』評がおもしろい。

ウェブの人気サイトの単行本化であり、匿名の著者はおそらくプロの(日本の)社会学者と思われます。内容的には……巷にあふれる、恣意的なデータの読み込みで自分の思い込みを垂れ流しているだけのダメ社会評論をバッサバッサと斬り捨てていきます。
ただ気になるのは「反社会学」を名乗るあたりです。実際には本書は内容的には「(偏ってはいるが)まともな社会学講座」であって、「反・社会学講座」ではありません。……往々にして自称「社会学者」の「研究」の少なからずが実はこうしたダメ評論と変わらないものになってしまっているとは言っても、それはそういうダメ「社会学者」の罪ではあれ、社会学という学問自体の罪ではありません。
またもうひとつ難を言えば、実は社会学者は経済学者や政治学者、その他諸々の××学者と比べたとき、圧倒的にこういう自虐ネタが大好きなのです。他分野の人間や素人に「社会学ダメじゃん」と言われると激昂することの多い社会学者ですが、仲間内では「社会学がいかにダメか」と言い合うことに無上の喜びを感じているとしか思えない人が多数います。その意味でも本書は実に正統的な「社会学」の入門書であるのでして、その事実を重うとぼくは少しばかりため息が出てしまうのです。


自虐する学としての社会学
正鵠を射ているように思われ。