日本社会における一般的信頼の低下

メディア利用と一般的信頼の関連について論文を書くための下準備に、調査データをしこしこ分析していたら、副産物としておもしろい(つうか、ちょっとヤバイ)結果を見つけてしまった。
一般的信頼とは、見ず知らずの相手に対する信頼だと考えてもらえばよい。
これは顔見知りの相手への人格的信頼とは性質を異にする。
調査のなかで、この一般的信頼尺度を構成する設問は次のようなもの。

  • ほとんどの人は基本的に善良で親切である
  • 私は人を信頼するほうである
  • ほとんどの人は他人を信頼している

こんなもんで信頼を測ろうとするんだから社会調査なんてアテにならんわな、という話は措いとく(いや、これがけっこうアテになるんだな、ということが先行研究ではわかってる)。
これらの設問は「そう思う」「やや」「あまり」「まったくそう思わない」の4択で訊いており、それぞれに3〜0点を割り当てて、単純加算し、一般的信頼尺度を構成する。
01年(/03年)/05年のいずれの調査データにおいても*1、尺度の信頼性はアルファ係数にして0.7は超えるので、そこそこ高い。
その一般的信頼スコアの平均値を男女別で年齢層ごとに示したのが、次のグラフ。




男女とも、かなりの多くの年齢層において、一般的信頼スコアは下がっている。
一般的信頼というのは単なる「お人好し」のことではない。
山岸俊男によれば、固定的・閉鎖的な関係を解き放つものだ(非専門家向けの啓蒙書としては↓がおすすめ)。

安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 (中公新書)

安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 (中公新書)

つまり、一般的信頼の低下とは、日本社会における関係性が閉鎖的になってきていることを意味する。
アメリカでも同じ低下傾向が確認されている。
リスク不安や階層化、希望格差化も、このこととおそらく無縁ではない。
さて、どうする?


ちなみに、とある事情により、この05年調査データの信頼性を追究中(だということが先ほどわかった)ので、とりあえず、この分析結果を信頼するのは、留保つきにしといてください。
たぶん大丈夫(それほど大きく結果が変わることはない)だろうと思うけど。

*1: 03年調査は01年の継続(パネル)調査なので、サンプルの性格が少し異なるため、とりあえず参考値として扱う